やよいさん:久しぶりの反省部屋ですねぇ。
今回もたっぷりと反省材料がありますよぉ。
カス:いえ、あの、やよいさん。
さすがに今回ばかりは…
やよいさん:今回ばかりは何ですかぁ?
ケイティブレイブが最低人気だから買えないと
いうんじゃないんでしょーねぇ?
あなたたちに競馬愛はあるんですかぁ?
これまで陽が当たらなかった長岡騎手が
GⅠの大舞台に騎乗するんですよぉ!
応援馬券を買ってあげようという気は
起きなかったんですかぁ?
若いマイナー騎手の複勝馬券を
汗で湿った手に握りしめて、
声が枯れるまでエールを送る
そんなロマンがあなたたちには
ないんですかぁ?
馬券が当たればいい?それだけですかぁ?
権兵衛:…それだけですが何か。
やよいさん:だったらどーして
おケツから3番目に終わった
インティを本命にしたり
3番人気のサンライズノヴァを
切ったりしたんですかぁ!?
おふたりにはロマンだけでなく
センスもありませんねぇ。
更新ができない間にとんでもない事態になっていますが、とりあえずフェブラリーSの結果を。
日曜日の競馬の結果
中央東京「フェブラリーS」…カスPハズレ/逆神の権兵衛ハズレ
1着 12番モズアスコット(1番人気)カス〇 権〇
2着 15番ケイティブレイブ(16番人気)
3着 9番サンライズノヴァ(3番人気)
軸馬インティは14着、上位3頭中2頭は無印という完敗。ただ、どう考えても買えないという馬券ではなかった。インティとモズアスコット、最後までどちらを本命にしようか迷いましたし、サンライズノヴァも取捨選択に迷った一頭でした。腹が立つのは、ハナからケイティブレイブを完全無視していた自身に対して。鞍上が森泰斗や御神本、それまで主戦だった福永だったら「こんなの絶対買えねえよ」で終わっていた。でも今回の鞍上長岡は今年このフェブラリーSを含めて17鞍しか騎乗がなく、まだ未勝利。そんなマイナーな若手が大舞台に挑むというのに、ケイティブレイブに長岡という報に接したとき、「陣営諦めモードだな」としか思わなかった自分に腹が立つのです。昔の自分なら、「長岡!ここで見せ場を作って名を売ってやれ!」と本命馬とのワイドや複勝くらいは買って応援していたはず。
昔競馬に夢中だった頃は、マイナー騎手が大舞台に出ると応援したものです。ヤマタケゴールデン&池田鉄平の「ジャパンダートダービー」、グロリアスノア&小林慎一郎やシルクメビウス&田中博康のジャパンカップダート、最近ではコメート&嘉藤貴行の日本ダービーもありました。
ところが中央競馬への関心が薄れるとともに、騎手についても疎くなった。それにGⅠになると一部のリーディングと横文字の騎手ばかり。こうなると思い入れはもうなく、それこそ騎手の名前は記号でしかなくなる。笠松競馬場でのトークショーで柴山雄一が「騎手を応援して馬券を買っても当たらない」という言葉が、諦念—この言葉には諦めと悟りというふたつの意味があるようですが、両方含めて—交じりで自分の言葉になりつつあるときに、長岡禎仁がガツンと一発喰らわせた。
そういえばグロリアスノア&小林がジャパンカップダートで2着になったとき、馬券は外れたけれど「よくやったコバシン!」と喜んだ。あの頃の馬券度外視の喜びを私は失っていたようです。もっとも、騎手の心境は1着にならなければ残りはすべて「負け」で一括りされるようで、長岡も悔しかったでしょう。そういえば2006年の宝塚記念で2着になったナリタセンチュリーの田島裕和は、翌日トレセンで会う関係者たちから次々と「おめでとう」と声をかけられて、首を捻ったそうです。何故負けたのに「おめでとう」なのか?と。13頭中10番人気だったのですが、どれだけ人気薄でも勝たなければ満足できない。武豊も著書で同じことを記している。「優勝以外は、2着も、最下位も一緒」と。現実には2着と最下位では賞金の有無や次の騎乗機会が与えられるか否か全然違ってくるのですが、それは騎手にとって二の次の話ということなのでしょう。「勝負」の世界に生きている以上、あるのは「勝」と「負」のふたつしかない。
これでかつての騎手に対する思いが完全に呼び起こされたわけではないのですが、これからは若手にも目を配ろうかな、と。そういえばダイヤモンドSで勝利した最低人気ミライヘノツバサの鞍上は木幡巧也。長岡よりは成績は良いし、重賞では既に2017年のレパードSを勝っているのですが、まだマイナーの域を脱していない。
もうひとつ、ある馬主の歴史が幕を閉じました。京都第4R障害未勝利で障害初出走ながら3番人気に推されたフミノムーンが落馬競走中止。予後不良(鞍上森一馬は怪我なし)。後続の他馬をも巻き込むという痛ましい事故でソウラセブンも死亡。他にもフミノの前に2番人気タイセイパルサーが落馬(こちらは無事)。飛越の巧拙よりも、むしろ当日の馬場状態がかなり悪かったのが原因といわれています。踏みきるところで足元が緩んでいたらバランスを崩すのは容易に想像できる。
フミノムーンは39戦6勝。GⅠでは2015年のNHKマイルCに出走して7着。重賞勝ちこそなかったものの、2015年マーガレットS(3歳OP)勝利や2017年バーデンバーデンC(OP)勝利、2018年シルクロードS(GⅢ)3着の実績があります。
「フミノ」といえばかつてフミノイマージンが活躍し、札幌記念を含む重賞を4勝しましたが、2013年のヴィクトリアマイルで競走中止、予後不良。当時の馬主だった谷二(つづく)氏は既に他界、奥方の谷迪(みち)氏が跡を継ぎましたが、夫が所有していた馬を最後に、自らは新しい馬を購入することなく競馬界から身を退くようです。従って「フミノ」の馬はこれが最後になりました。
谷二氏については、親族の方と面識あり、自身「フミノ応援団」長を自称していた元競馬マスコミshugoro氏がその経歴と馬主としての足跡を過去に綴っています。
地味な馬主ですが、人柄なのか密かに応援していた著名な競馬マスコミも多くおられたらしい。フミノイマージンが予後不良となったヴィクトリアマイル、勝ったのは皮肉にも元メジャーリーガーが所有するノーザンファームの良血馬でした。若手女性ジョッキーを乗せてGⅠに挑む有名風水師や社台のセールでポンポンと高額馬を競り落とす金満馬主。そういったスポーツ新聞の紙面を賑わす派手で華やかなところも競馬の醍醐味ですが、一方で、表に出ないながらも何十年も馬主を続けている馬主や小さな牧場がときにはドラマを起こし、でも多くは何事も起こさぬまま過ぎ去っていく。
競馬が人生の縮図とはよくいわれます。何をもって「人生の縮図」というかは人それぞれでしょうが、金をいっぱい持った者目立った者勝ちなれど、そうでない場面がときにあり、人はそれに自らを投影し、魅せられていく。「フミノ」は大きなドラマは起こせなかったのですが、shogoro氏だけでない多くのファンがいたことも事実です。そして彼らは「フミノ」が果たせなかった夢を受け継いだ、別の誰かがドラマを起こしてくれることを期待して待っているのです。
ここ暫く、私は競馬をギャンブルとしてしか捉えていなかった。勝てなければムキになる人もいますが、私は本来良い意味でも悪い意味でもギャンブルに向く性格ではないので、負け続けるうちに自然と足が遠のいていった。笠松競馬場も今年に入って一度も行っていない。でも長岡禎仁の活躍と「フミノ」の終わりが、自分にも、競馬に馬券の当たりはずれ以外の嬉しさ、悔しさ、悲しさがあったことを思い出させました。