粕本集呆の馬事放言

「粕本集呆の辛口一献」に替わるカスPこと粕本集呆の新ブログ。主に競馬関連中心ですが、ニコマス活動再開も企図しております。

競馬の終わりの始まり

何かね……今回のJRAの不正受給事件……どう捉えればいいものか。調教師19人、騎手13人を含む165人の厩舎関係者の不正受給。その額1億8900万円。

 

【JRA】調教師19人、騎手13人含む165人が持続化給付金を不正受給 総額は1億8900万円に(中日スポーツ) - Yahoo!ニュース

 

これに対するJRAの対応。橋田満調教師、武豊のコメント。

—今後も騎手一丸となって競馬でのベストパフォーマンスをファンの皆様にご提供できるよう日々努めてまいります。引き続き中央競馬をご声援くださるよう心からお願い申し上げます。

何か武豊のコメントを読むと、くすねたお金はちゃんと返すし、競馬頑張るから今回のことは大目に見てね、程度の認識しか伺えない。事の重大さをわかっていないとしか思えない。

昔のこと。私がまだニコニコ動画を通じて荒尾競馬の存続を応援していた頃。その企画を盛り上げるため、さる同期デビューのP(動画制作者の通称。ゲーム「アイドルマスター」のプレイヤー=プロデューサーの頭文字だが、初音ミクボーカロイドの動画作者もPと呼ばれる。)のひとりに、絵が上手なPがいて、その人に応援イラストを依頼したところ、競馬は好きでないという理由でにべもなく断られてしまった。そのとき、それまでは漠然とした存在でしかなかった競馬が嫌いな人が、確かに実在するのだと認識させられました。

その人が競馬が嫌いな理由はわかりませんが、ギャンブルだからでしょう。そういう人から見れば、競馬もパチンコも、時代劇でやくざが仕切る賭場の丁半博打も同じもの。

だから競馬に携わる人は、他の業界の人以上に身をただし、紳士淑女でなければならない。ミホノブルボンを育てた戸山為夫師は、「競馬場の子」と後ろ指さされながらホースマンとして生き、弟子や厩務員の子供たちがそんな目に遭わないような競馬界にしたいと、同じ厩舎関係者たちの抵抗や非難に屈することなく競馬界の改革を訴え続けました。生活に困った人々が受け取るはずの給付金を詐取し、こっそり返して知らん顔する中央競馬厚顔無恥な輩たちを、戸山師は天からどう思って見ているか。

笠松競馬の誘導馬に乗る塚本幸典氏は、地元の競馬場に対する見方を和らげるため、かつては「パク爺」ことハクリュウボーイ、今はエクスペリテ、ウィニー笠松の街中を歩き、市民たちとの触れ合いを続けました。私もエクスペリテの鼻づらに実際触れたことがあるのですが、おとなしいというかとろいというか。地方競馬の中には、名古屋のように誘導馬を廃止した競馬場もありましたが、笠松競馬の運営で唯一評価できるのは、誘導馬をなくさなかったこと。兵庫(園田・姫路)競馬にもマコーリーという人気の誘導馬がいて、塚本氏は公然とライバル視していましたが、ライバルということは相手を認めているということで、やがて笠松、園田・姫路の誘導馬カレンダーもできたりした。そんな塚本氏の努力を怠慢な事務方と一部の愚かな関係者が踏みにじったのです。

競馬がギャンブルなのは事実。じゃあ競馬とやくざの丁半博打と何が違うのか?合法非合法は置いておいて、そこに勝った負けた以外の物語があることです。名馬と呼ばれる馬とそれに関わった多くの人たちが生み出す、一瞬の勝負とそこに至るまでの長いドラマ。私が郡上の郷土文化誌にオグリキャップと小栗孝一氏、鷲見昌勇調教師の物語を書けたのは、馬にも人にも、頂点に立つまでのドラマがあったから。私も競馬をはじめてしばらくは、賭けに負けても素晴らしいレースだったと拍手できる中央のレース、讃えたい馬や人が少なからずありました。一方で経営難に苦しむ中で生き残ろう、存続させようと必死になる地方競馬の人たち。中には荒尾のように矢尽き刀折れ、力尽きた競馬場もありましたが、そういう人たちに直に触れてきたからこそ、競馬を続けてきました。競馬ファンの多くがそうであり、またギャンブルに興じる自身をそういう大義名分で、正当化とまではいかなくても許そうとしたりした。

しかし笠松JRAは、ファンが競馬を応援する根底を崩してしまった。笠松については先に述べました。JRAは不正に受給した関係者の氏名公表をしないし、また組織として罰することもないという。そうなると、ファンは以降、不正を犯しておきながら、こっそり返しただけで誰にもバレずに済んだ関係者たちによるレースに、自分の財産を賭けることになるのです。どんなに感動的なレースも、乗っていた騎手も管理していた調教師も、馬の世話をしていた厩務員も、不正受給を受けた心根の卑しい輩ではないかと疑うようになる。そうなるとドラマは生まれない。中央競馬は、1億8900万円を騙し取っておきながら何の罰も受けない、顔の見えない165人の詐欺師の巣窟としてこれから存続していくことになる。

私は受け取った者の氏名は公表すべきだと思います。コロナに関わる給付金の不正受給については、原則捜査が入る前に自主申告し、返還すれば刑事罰に問われないそうだから、刑事罰に問われ、公営競技の根幹である公正を揺るがした笠松の件と違い、追放までは要求しない。ただ、ファンから暫くは白い目で見られなければならない。汚名を返上できるかどうかは、当人たちのその後の努力次第。ボランティアだってある。何もはっきりしなければ、武豊ルメールも福永も、不正受給を受けた13人の騎手のひとりである可能性を否定できないことになります。そんな灰色の騎手たちによる「競馬でのベストパフォーマンス」を提供されても心から楽しめない。ギャンブル依存症でない限り、心から楽しめない競馬からファンは離れていくでしょう。世の中面白いものは探せば幾らでもある。

 

笠松競馬の件につき、ある方がコメント欄で笠松競馬は廃止すべきだという意見を寄せられました。私とは対極ですが、最後の言葉「笠松競馬場はもう役目を終えたと断言します」に、今回の中央の不祥事が重なり、一瞬目眩をおぼえた。

いや……笠松だけではなく、中央を含めた競馬全体がもう役目を終えつつあるのでは。さすがにすぐに競馬そのものがなくなることはないでしょう。でも笠松がなくなり、数年置きに他の競馬場もひとつひとつ、老人の歯が欠けていくようになくなる。馬産も縮小し、やがて中央も負の相乗効果で福島、新潟、小倉、中京とローカル競馬場がひとつづつ消えていく。オートレースのように南関だけの小じんまりとした地方競馬と、もうスポーツ新聞の日曜の一面を飾らなくなった中央GⅠ。そもそも馬産は畜産とはいえ、他と違って食生活に密接しているわけではない。50年後にそうならないと誰が断言できるだろうか?私は自分の命はせいぜいもってあと20年くらいと思っていて、競馬の終わりを見ることはないでしょうが、競馬の終わりの始まりを今目にしているのかもしれません。

とはいえ、笠松競馬が生き残ろうと足掻くなら、かつての荒尾競馬のときのように、私も一緒になって足掻きたい。

そして笠松競馬が廃止になったときは、私はもう競馬をやめると思います。笠松が廃止されたら、もう応援する地方競馬場はないし、何より私が応援する地方競馬場は潰れるというとんでもないジンクスができてしまう。それにかつてのように灰色の中央競馬に夢中になることもないでしょう。そのときは、このブログも場所を変えて、サンテレビの「おとなの絵本」のノリでエロネタ満載の「夜のカスP—略して『夜カス』」にしてもいいかな、と。まあ…すぐ打ち切りになりそうだけど。